男と猫。03

22 Jun 2016

彼女こそ美のミューズ、ガリガリさえしなければ・・・。

井上卓也さん(38歳)は代官山のサロン『キリコ』で活躍する美容師だ。幼い頃から画家など、手先が器用な人に憧れていた井上さんは、小4のときにお兄さんの整髪料をこっそり使ったりして、お洒落に目覚めたという。高校ではレトロなパンクスタイルを自分なりにアレンジしたり、流行半歩手前の服を見つけるのが好きだった彼は、90年代中盤に初めて行ったラフォーレ原宿のサロンで衝撃を受ける。スタッフの所作、お客さんの着こなし、すべてがファッションショウのようにクールだったのだ。『自分らしさを生かすのはコレしかない』と卒業後に美容学校へ。ちょうどその頃に友人からもらい受けた子猫がペピンだった。黒猫は幸運を呼ぶというが、すぐに美容ブームが来て、それを牽引していくことになるサロンに就職。そこで師と仰ぐ先輩に出会う。さらに、カリスマブームに疑問を感じた先輩が本物のサロンを開きたいと始めた『キリコ』ヘ誘われたのだから、まさにペピンは招き猫。とはいえ家に来た当初は甘えん坊のくせにお転婆娘で、商売道具の手は傷だらけ、壁紙や家具はバリバリ状態だった。そんなペピンも今や貫禄の19歳。「親や兄弟や奥さんよりも一緒にいた時間が長いのだから、お互いが特別な存在。医者いらずの健康優良だったけれど、最近は食べ物や体調を気遣っています」。最後に、美しくなるコツを質問すると「いろいろなテクを労するのでなく、ほんの少し変えればすごくカワイクなれる。その人らしさを出す最小限のポイントを見つけるのが僕の役割です」。井上さんはミニマムな美の伝道師。そんな彼の視線の先で愛猫は一張羅の黒服を優雅にお手入れ中だ。『ペピンは僕の美のミューズ、ガリガリさえなければね(笑)』。

 

  • 井上卓也:(38歳)美容師
  • ペピン:(19歳)♀Mix
  • Photography:Masayuki Ichinose
  • text:Shuhei Tohyama
  • Direction:Takeshi Gonnokami