男と猫。01

01 Oct 2015

建築士と猫の関係は黒い蜜の味がする

スマートグリットや水素エネルギー、10年先我々の生活はどんなふうに変わるだろう。渡辺紀昌さん(35歳)は、港区の設計事務所に勤務する気鋭の若手建築士。彼はCGやアニメを駆使し、近未来のライフスタイルをわかりやすくプレゼンテーションしてくれる。こうした最新の手法は、さまざまなデザインコンペ(競技設計)を数多く手がけたことで会得したらしい。『鉄は熱いうちに鍛えろ』ということわざがあるように、男は、卒業後の数年間でひと通りの仕事を覚えたら、仕事の数をがむしゃらにこなすのが良い時期がある。渡辺さんが、半野良状態の子猫だったクロミツと出会ったのは、まさにそんな人生の多忙期となる30歳のときだった。この5年間で、渡辺さんは転職でキャリアアップし、3度の引っ越し、そして奥様となるファッションデザイナーのキュートな女性と出会い、現在は湘南の潮風が気持ちよく抜ける集合住宅で落ち着いた生活を始めた。いっぽうクロミツは、最初こそふとんを2度買い替えさせる失敗をやらかしたが、環境の激変にもめげずに、成熟。見ず知らずの子猫2匹にお乳を与えて育てるなど、未婚の乳母の経験までして、今はご夫婦の真ん中に寝そべり『子はカスガイ』役をこなしている。「ぼくとクロミツの関係は、溺愛というものとは少し違う気がする。徹夜や出張があり家を空ける事が多い。海外へ3カ月出ていても、家に帰れば必ずベッドへもぐりこんでくる。それがすごく愛しくて仕事の疲れが吹き飛びます。」と、目がほころぶ。家庭ではおだやかだが仕事には妥協しない男と猫の関係は、アンミツの黒蜜がけ。そのココロは、甘さ抑えめで滋養は深い!

 

  • 渡辺紀昌:(35歳)建築士
  • 渡辺クロミツ:(5歳)♀雑種
  • Photograpy:Masayuki Ichinose
  • text:Shuhei Tohyama
  • Direction:Takeshi Gonnokami